第一章『魔物の蠢動』その1
ガレリア王都
小隊長ティナ「あら、こんにちは。自己紹介が遅れたわね。わたしはティナ。はじめまして。そして、ようこそ。ガレリアへ。あなたはどこから来たのかしら?」
―セタ=グリアで起きた事と、脱出した船すら襲われた事を話した―
小隊長ティナ「……あぁさっきの騒ぎの船にあなたも乗っていたのね。話は聞いたわ。船を襲う凶悪な魔物……。港側の警戒も強める必要がある。しかし人手も足らないこの時期に上層部が納得するか……?あぁ、いえひとまず緊急入港の届けを出した方が良いわね。
あそこにいるヌンツィオという兵士が担当しているから、彼に報告すると良いわ。この国の兵士の中では話が通じる方だし。」
門番ヌンツィオ「さっきから、ずいぶん港の方が騒がしいな。一体どうした?
緊急入港の報告か。ふむ。何故君が……? 船長は……沈みかけの船から荷下ろし中か。わかった。アクィラ号だな。受理しよう。
いくつかの島が魔物に襲われたと聞いている。そこから逃げた船の生き残りならよく助かったな。手厚く保護されるはずだ。
あぁ、そうだ。さっき入った船で思い出した。この先の「ガレリア大平原1」に、止めるのも聞かず、人が一人入ってしまってな。危険だ。
その場に、俺と一緒に止めようとしてくれた船員もいたんだが、追いかけて行った彼まで戻ってこないんだ。様子を見てくれないか?」
門番ヌンツィオ「すまないな。俺はここの番を離れられない。追っていったのは多分アクィラ号の船員だ。「船員モデスト」という奴をまず探してくれ。」
ガレリア大平原1
昔は右にいたよな、お前
船員モデスト「うん? ここで何してるかって? ここは明日の天気を計るのにちょうど良いんだよ。三年前に寄港した時、気づいてな。うん? あぁ、あんたか。お互い生き延びられて良かったよ。 でも放っておいてくれ。」
俺には善意なんて無意味だったんだよ。俺が止めようとしたあの男。あいつは最悪だ。危ないと忠告したら、俺を臆病者だってよ。
あいつは大事な事を知らないからそう言える。あんな奴に俺から言える事は何もないよ。もういい。勝手に怪我でも何でもすれば良い。
あいつのことなんかもういいさ。まったく……。
あいつが危険な目に遭うのを止めないかって? 止めない。俺は善意なんて嘘だと思ったんだ。船長の適当な善意で半月も無為にした。でも、もしあんたに本当の善意があるって言うなら、「スーク」を狩って見せてくれ。」
スークちゃんかわいいのに……
船員モデスト「それじゃそこいらにいるし、五匹は自力で倒して、俺に見せてくれよ。本物って奴がこの世にあるのかどうか。」
スーク倒し。
船員モデスト「俺だって……誰かに親切に……。あぁ、いや、なんでもない。なんだよ?
ほ……本当に倒してきたのか。あんた本気でそういう……。
凄い奴だ……。あぁ、いや、でもな……。俺あいつに善意を侮辱されたんだぜ? これだけでそう簡単に……。
うーん……あんたは良い奴なんだろうけど……。
俺だってさ、善意ってやつの恩恵が欲しいよ。もし善意ってやつがこの世に必要って言うならあんたが俺にも善意をくれよ。
そうだな……俺は、食料を仕入れる仕事も任されていてな。その手伝いを、あんたが善意でしてくれるって言うなら、話は別だ。」
船員モデスト「「ベルクヴォルフ」の肉は干し肉にしやすい。ここいらにいる奴らを狩って、5つ集めてきてくれ。それが俺の欲しい物だ。」
狩りまーす。
船員モデスト「ほ……本当に持ってきてくれたのか⁉
あんたは良い奴……いや、ちゃんと精霊の声が魂で聞こえる人ってことなのかもな……。
……あ、ありがとう。あんた……なんていうかその……。いや、うん。結局こういうのが、精霊の望む思し召し、って事なのかな……。」
正直……嬉しいと思った。あぁ、えっと……。それじゃあ、あいつの知らない事をあんたに話すよ。あいつを助けるのに必要な情報だ。
何から話したものかな……。
あいつさ、世の平和のために、自分はここで船が出る合図まで、魔物を狩っておく、って言ってやがった。合図なんて出るかよ。
今海は魔物で一杯だ。当面は港は使えない。多分引き際を逃して、いずれ怪我するだろうと思ったわけさ。これ、あいつに知らせるのか?」
船員モデスト「そうか……そうしてくれると……助かる。俺は……今更あいつと顔をあわせ辛いしな。俺達には多分……善意って奴が必要なんだ。」
冒険者アレクシオ「魔物が少ないおかげで、人と人同士で争うと皮肉を言われる立場のガレリアでさえこんなに魔物が増えるとはな……。
うん? この後船が出る事は当分ない? そうか。それは教えていただき助かった。しかし、何故貴方は私にそれを?
そうか。私はあの船乗りの彼を一度怒らせてしまっていたか。それはすまないことをした。
しかしただひとすらに人々に奉仕するという点 そこで我々は同じ物を見ているのかもな。私も、貴方も、彼も。
近頃は、人間を襲う魔物が特に多く目撃されている……まるで3年前のようだ。
もし貴方が私と同じ志を、精霊の意思に従って人々への奉仕をこれからも重ねていくつもりだというなら一つ私の手伝いをしてくれないか?
この先にいる商人のダミアノという男に、この荷物を届けてきて欲しいのだ。以前収集を頼まれていた物でな。」
冒険者アレクシオ「助かる。彼には彼の、人々に物資を滞りなくいきわたらせる使命があるはずだ。私はここでもう少しだけ討伐を続けよう。」
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